2024年初頭から、オーストラリアではポストコロナ時代の雇用状況の変化により、在宅勤務と出社勤務を巡る議論が活発化しています。出社と在宅勤務を織り交ぜた「ハイブリッド勤務」が定着したものの、企業と従業員の間で働き方の最適なバランスを巡る対立が表面化しています。労働法、企業方針、従業員の希望など複合的な背景から今まさにポストコロナの働き方が過渡期にあるように感じます。
興味深いことにオーストラリアでは、特にZ世代(1996~2010年生まれ)の従業員が他の世代に比べて出社率が高いということが調査によりわかっています。キャリアの初期段階にあり、ネットワーキングや学びのために出社を強要されている可能性もあるかもしれません。また、ニューサウスウェールズ州では公務員の出社推進が決まったのに対し、ヴィクトリア州政府は依然として在宅勤務を維持しています。
オーストラリアの労働市場は、パンデミック直後の人材不足から一転し、市場の特徴として経済回復、移民増加による労働人口の増加、失業率の低下が挙げられます。したがって、雇用主優位の市場傾向(買い手市場)が強まっているのが現状です。企業は生産性向上を目的に出社を促しており、ANZ銀行やサンコープ、オリジン・エナジーなどの企業が、従業員に対して出社日数を増やすことを業績評価や報酬に関連付ける新しい取り組みを進めています。出社率が増加することで、メルボルンCBDなどでの活気や経済回復も期待されています。
先日、フェアワークでは民間企業の事務職を対象とする「クラークス・アワード」に在宅勤務に関する条項を導入する方針を発表しました。労働者としては、在宅勤務を重要な福利厚生として位置付けており、これが決定されると在宅勤務の選択肢が認められます。一方で、ロバート・ハーフの調査によれば、出社義務を導入した企業の31%で少なくとも1人の従業員が退職していると報告しています。出社義務化には一定の反発があり、買い手市場の中、「人材確保」の面からも従業員の要望とのバランスを取っていく必要があります。
AIの発展により業務効率化が進む一方で、企業は生産性向上と賃金のバランス、そして柔軟な働き方をどう取り入れるかが課題になります。「やることをしっかりやってればいい!」というオーストラリアらしい働き方が変化していきそうな予感です。この過渡期を乗り切るために、従業員は仕事へのコミットメントがより一層重要になり、企業側も従業員のニーズに柔軟に対応することが鍵となりそうです。
参考:The Daily NNA豪州&オセアニア版(Australia & Oceania Edition)
Category: コラム / 働き方
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