「オーストラリアでマーケターとして働いています」そう聞くと、英語が堪能で、海外就職を狙って準備してきたキャリアウーマン——そんなイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、今回お話を伺った豊川美玲さんのキャリアは、いわゆる“王道の海外就職ストーリー”とは少し違います。
前回の記事(動画)では、オーストラリアで事故に遭ったとき、仕事中に怪我をしたとき、日本人が知らずに損をしてしまいやすい現実から緊急時の対応について、法律事務所のマーケター、日本語相談窓口という立場からお話しいただきました。
後編となる今回は視点を変え、
「なぜ、今オーストラリアでマーケターとして働いているのか」
「そもそも、海外で働くつもりはあったのか」
というキャリアの部分を深掘りしていきます。
最初からオーストラリアで働くつもりもなかった。それでも今、現地の法律事務所でマーケターとして働いている。その背景には、「リアルな選択と偶然」がありました。
海外でのキャリアに少しでも興味がある方、「このままでいいのかな」と立ち止まった経験がある方にこそ、ぜひ読んでいただければ幸いです。
豊川美玲さん
日本で外資系IT企業に新卒入社後、IT・不動産・ホテル業界にて営業職および人事職に従事。人事マネージャーとして採用・育成を中心にキャリアを積んだのちコンサルティング事業で独立開業。2023年よりブリスベン在住。現在は、豪州の人身傷害専門のLittles Lawyersにてマーケターとして勤務。
Instagram:https://www.instagram.com/mirei_aus/
CAREER MEISTER 楠本(以下、楠本):
今日はゲストに、オーストラリア全土に拠点を持つリトルズ法律事務所で、日本語窓口・マーケティングを担当されている豊川さんにお越しいただきました。よろしくお願いします。
豊川美玲さん(以下、豊川):
よろしくお願いします。リトルズ法律事務所で、マーケターおよび日本語でのお問い合わせの窓口を担当している豊川美玲と申します。
※リトルズ法律事務所は、事故や怪我病気に対する補償請求(compensation)に特化した法律事務所です。
楠本:
まず率直にお聞きしたいのですが、法律事務所でマーケターとして働くことになった経緯って、どういう流れだったんですか?
豊川:
それが本当にひょんな出会いで…。実は私、オーストラリアでは就活らしい就活を一切していないんです。
楠本:
え、してない?今このYouTubeを見ている視聴者の皆さんが、就活しなくてもオーストラリアで就職できるの?と目が点になっていると思います。
豊川:
そうですよね。実は、仕事を探していなかったんです。なので、正直に言うと…棚ぼたですね。
楠本:
そもそもオーストラリアに来られたきっかけは留学ですよね?
豊川:
そうです。学生ビザで来ました。期間は1年半です。最初に来た時点で、もうワーホリの年齢でもなかったですし、「海外で働こう!」という目的ではなかったんです。
楠本:
じゃあ、何のために?
豊川:
40代を迎えるタイミングで、日本で個人事業としてやっていた仕事を法人化して続けるのか、それとも会社員としてのキャリアを続けるのか。それをちゃんと悩む時間が欲しかったんです。
日本では、いわゆる残業たっぷりのサラリーウーマンを長くやってきて、その環境のままでは将来のことを冷静に考えられないな、と。一度、距離を置かないといけない。その条件を色々考えて選んだのが、オーストラリアでした。
楠本:
じゃあ、最初から永住とか就職は考えていなかった?
豊川:
全く考えてなかったですね。帰る前提で来ていました。日本でやっていた個人事業の仕事をそのまま持ってきて、オーストラリアではリモートで、日本円で稼ぐという形です。
楠本:
為替的には…効率は良くないですよね。
豊川:
そうなんです。効率は悪かったです(笑)。でも帰る前提だったので、キャリアを断絶させない、収入を途切れさせないこの2つを優先しました。
なので、こちらでレジュメ配りをしたこともないですし、「本気で仕事を探す」という就活はしていません。インターンでもやってみた方がいいかなと、探したことはありますが、いわゆる本気の就活はやっていません。
楠本:
でも視聴者の方は思いますよね。「就活しなくても、オーストラリアで働けるの?」って。
豊川:
実際、相談もすごく多いです。「どうやったら、私みたいにオーストラリアでマーケの仕事ができますか?」って。でも正直に言うと、私のケースは参考にならないと思っています。
楠本:
正直そうですよね。僕自身も、日本から就活をして、たまたまオーストラリアで就職できたので、再現性がとても低いし、当時とは勝手が違う部分もありますもんね。
豊川:
オーストラリアに来て1年くらい経った頃、プライベートで仲良くしていた現地の方と「これからどうするの?」という話になったんです。
ちょうど2024年の7〜8月で、学生ビザの条件が厳しくなり始めたタイミングでした。
楠本:
PRの年齢制限や、卒業生ビザの変更が話題になっていた頃ですね。
豊川:
そうです。オーストラリアは想像以上に住みやすくて、自分に合っている。でもステイする方法がないから、帰ることになると思う。そう話したら、「もうちょっと居たいですか?」って聞かれて。
楠本:
それは…居たいですよね。笑
豊川:
居れるなら、って答えたら、「じゃあ、うちで働いてみませんか?」と。もちろん、試用期間があったんですが、なんとかスポンサービザで継続させてもらえることになりました。
楠本:
まさに、ご縁ですね。
豊川:
本当にそう思います。知り合いも多くなかったですし、たまたま定期的にお会いしていただけ。実は、その方が、今の会社の社長なんです。
楠本:
でも、誰にでも同じことが起きるわけじゃない。
豊川:
そうですね。法律事務所としても、日本のコミュニティを強化したいという方針があったこと、私が日本語と韓国語を話せたこと。英語が得意じゃない私にとっては、そこが大きなアドバンテージでした。
オージー向けマーケティングではなかったので。日本語・韓国語の方が重要だったんです。
楠本:
よくオーストラリアの永住者も「運が良かった」「縁があった」と言いますけど、そもそも豊川さんがそれだけの経験を持っていたからこそです。きっと、日本での経験が評価されて、一瞬のチャンスをモノにできたんだと思います。
豊川:
ありがとうございます。私自身も今振り返ると、日本で10年以上やってきた仕事が全部、今に繋がっていると感じています。人事の仕事をしたいと思いながらも営業からキャリアをスタートし、念願かなって人事にキャリアチェンジしたあとも、希望する仕事を任せてもらえないことが多くありました。当時は「これ意味あるのかな」「向いてないな」と思っていたことも多かったですが、今は今までの仕事の集大成をやっている感覚があります。
楠本:
海外就職を目指す方に、僕がよく言うのは「これで食っていける」という武器を持ってから来た方がいい、ということです。
豊川:
本当にそう思います。「やる気だけ」で来るのは、オーストラリアではかなり厳しい。日本はポテンシャル採用も多いですが、こちらは年齢関係なく経験値を問われますもんね。
豊川:
差別という意味ではなく、「自分はテンポラリービザ(臨時滞在者)なんだ」という自覚と危機感は必要だと思います。結果を出して、「この人は必要だ」と示し続けないと、ビザの交渉もできません。結果がすべてだと思っています。
楠本:
今後のキャリアは、どう考えていますか?
豊川:
今は、あえて考えないようにしています。20代・30代の頃は5年後、10年後を考えて動いてきましたが、できなかった時に自分を責めてしまって。今は、「不安定な状況の中で、今日をちゃんと頑張る」そこにフォーカスした数年があってもいいかなと思っています。
楠本:
チャンスの神様って、前髪しかないですからね。一瞬で通り過ぎてしまうので、そのチャンスを掴めるかどうかは、その時に自分の実力が備わっているかどうか。それをチャンスと思って、掴みきれるか。ということなんです。
豊川:
本当にそう思います。掴めるだけの実力を持って、掴んだ後は、必死に離さず結果を出す。それが海外で働くということなんだと思います。
楠本:マーケターになりたいっていう人ってすごく多いんです。そんな方々に向けて、メッセージをお願いします。
豊川:
海外でマーケターを目指すなら、まず日本でマーケティングスキルや経験を積む、できることをやってから海外に挑戦するのが理想です。未経験で挑戦したいという人もいると思います。私は営業や人事など過去の職種経験も、活かせていると感じます。たとえば、応募者や顧客を集める、契約や入社までフォローする、といった基本スキルはマーケティングに落とし込んでも活用できる、結局同じなんだなと感じています。
マーケティングといっても、さまざまなフィールドがあるので一概には言えませんが、私のような仕事であれば「営業」の経験も十分に活かせると思います。
海外では、0から未経験を育ててくれる会社はほとんどないため、基礎を積むことがチャンスを掴む前提です。また、現地の人が避けがちなフィールドマーケティングやピープルマーケティングなどを戦略的に狙うことで、競争力をつけていくというのも現実的かもしれません。
海外で働くこと自体をゴールにせず、「どんな経験や武器を作るか」を意識し、戦略的に準備してチャンスを掴める環境に身を置くことが、成功への最短ルートだと思います。
皆さん、頑張りましょう!
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